【これだけ押さえよう】透析治療|服薬・シャント管理のポイント

(4)貧血・栄養状態に関する検査
赤血球(RBC)
【解説】
酸素を運搬しています。基準値未満だと貧血が疑われます。
【参考値】
一般成人女性正常値:380万~480万個/mm3
一般成人男性正常値:410万~530万個/mm3
血色素ヘモグロビン(Hb)
【解説】
赤血球の成分の一つです。肺で受け取った酸素を全身に供給し、二酸化炭素を肺に運ぶ役割を担っているのがヘモグロビンです。
【参考値】
目標値:週始めの透析前で10~12g/dL
ヘマトクリット(Ht, Hct)
【解説】
一定量の血液中に含まれる赤血球の容積の割合をあらわします。「赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット」の3つの検査データから、赤血球の大きさ、1個の赤血球中のヘモグロビン量や濃度を計測できます。
【参考値】
目標値:30~33% (透析前)
白血球(W,WBC)
【解説】
白血球は、外部から進入してきたウイルスや細菌などの異物を撃退します。
高値の場合:
感染症、胆のう炎、虫垂炎、膵炎などの炎症性の疾患、心筋梗塞、白血病、がん。外傷があるときや、運動直後、ストレスの強いとき。
低値の場合:
ウイルス感染症の初期、再生不良性貧血、膠原病など。
【参考値】
一般成人正常値:4000~9000個/mm3
血小板(PLT)
【解説】
血小板には、血液を凝固させて、出血を止める働きがあります。そのため、血小板の数が減ると、出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなります。5万個/mm3 以下になると鼻血が出たり、歯茎から出血しやすくなりますし、3万個/mm3 以下になると脳出血などを起こす危険性があります。
【参考値】
一般成人正常値:
15万~40万個/mm3
総鉄結合能(TIBC)
【解説】
鉄を運ぶ機能をもつトランスフェリンと、結合できる鉄の総量です。貧血の診断指標として測定されます。
【参考値】
一般成人正常値:290~355μg/dL
フェリチン
【解説】
血液中に含まれるたんぱくの一種です。鉄の貯蔵庫の役割を持ち、からだの中にどのくらい鉄があるか反映します。また、鉄量とは関係なく、がんによっても高値になります。
【参考値】
目標:50~300ng/mL(治療状況により目標値が異なる場合があります)
アルブミン(Alb)
【解説】
たんぱくのひとつです。 栄養状態がわかります。たんぱく質が十分とれ、なおかつエネルギー源として使われずに体の中にしっかりと残っているかをみることができます。
高値の場合:
脱水になります。
低値の場合:
むくみやすくなります。
【参考値】
4g/dL以上

鉄欠乏があるかどうかは、血清鉄、フェリチン、鉄飽和率を総合的にみて判断します。

(5)肝臓に関する検査
AST(GOT※)
【解説】
心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く存在する酵素でアミノ酸をつくる働きをしています。これらの臓器の細胞に異変が起こると数値が上がります。 肝臓障害、心筋梗塞、溶血などの診断に有効です。
【参考値】
一般成人正常値:35IU/L以下
ALT(GPT※)
【解説】
肝臓の細胞の中にある酵素です。 肝細胞の変性や壊死に反応するので肝臓・胆道系の病気の診断に有効な検査となっています。
【参考値】
一般成人正常値:35IU/L以下

※従来「GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)」、「GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)」と呼ばれていましたが、生化学者が名前を変えました。GOTは「AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)」に、GPTは「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」です。近年国際的な標準になりつつありますが、単に名前が変わっただけで、単位もまったく同じです。

γ-GTP
(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)
【解説】
肝臓の解毒作用に関係している酵素です。肝臓や胆管の細胞が壊れると数値が上がります。 アルコールによる肝臓障害の指標となっています。
【参考値】
一般成人女性正常値:6~30U/L
一般成人男性正常値:8~50U/L
アルカリホスファターゼ(ALP)
【解説】
主に胆道から出る酵素の一つです。骨や小腸にもあります。
高値の場合:
胆汁の流れが完全に止まり、黄疸が出てくるときに高値になります。 また、胆道や骨の病気のときにも上がります。
【参考値】
一般成人正常値:
115~359U/L
(透析患者様は骨代謝異常のため、一般的に高くなります。)
HBs抗原
【解説】
B型肝炎ウイルス(HBV)に現在感染しているか、過去に感染したことがあるかの判断の指標となります。
【参考値】
陰性:
8倍未満(MAT法)
0.05 IU/mL未満
(CLIA法)
HCV抗体
【解説】
C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかがわかります。
【参考値】
陰性:1.0未満
陽性:1.0以上(COI)
(6)そのほかの検査
β2-ミクログロブリン
(β2-MG)
【解説】
腎臓で除去されるたんぱくの一つ。透析では除去しにくいため、長期透析で高値になりがちです。透析アミロイドーシスの原因物質で、脊椎に沈着すると固まって動かなくなったり、手の関節に沈着すると手根管症候群になったりします。心臓に沈着すると心臓の筋肉が縮みにくくなり、腸や胃に沈着すると胃腸障害を引き起こします。 できるだけ低値を保つように透析治療を行います。
【参考値】
一般成人正常値:31.5~100μg以下
血糖値
【解説】
糖尿病患者様は定期的に測定します。食事療法やインスリンなどの薬物療法が適切かをみます。
【参考値】
一般成人正常値:80~100mg/dL
総コレステロール
(T-Cho)
【解説】
細胞の壁をつくったり、ホルモンをつくったりするのに必要な物質です。栄養状態に関係しています。
高値の場合:
食べすぎが原因と考えられます。正常に抑えて運動などで消費すれば回復するでしょう。
低値の場合:
栄養状態がいま一つだと考えられます。食生活を見直しましょう。
【参考値】
一般成人正常値:130~200mg/dL
心胸比
(CTR)
【解説】
胸の両脇と心臓の大きさとの比です。適正な体重が保たれているかをみています。 個人差があるので絶対値ではなく、以前と比べてどうかということが重要です。水分や塩分をとりすぎると、体重が増加して血圧が上昇し、心胸比が増大します。
【参考値】
女性:55%
男性:50%

【ドライウェイトについて】
透析患者様が水分管理する時に目標とする体重のことを、ドライウェイトと言います。これは、過剰な水分をとり除いた時の適正体重です。血圧・心胸比・むくみ・透析後の症状などにより決まるので、太ったりやせたりするたびに変わります。