【これだけ押さえよう】透析治療|服薬・シャント管理のポイント

透析中の検査データの見方

透析の効果や合併症が起きていないかなどを確認するために、さまざまな検査が定期的に行われます。検査結果によっては、食事や生活習慣の見直しが必要なこともあります。何のための検査なのか、検査データからどのようなことがわかるのか、患者様自身も理解しておくことが大切です。

(1)透析効率をみる検査:充分な透析を受けられているか

・尿素窒素(BUN)
・クレアチニン(CRE)
・尿酸(UA)データの見方はこちら
(2)電解質に関する検査:体液のイオンバランスをみています。
・ナトリウム(Na)
・クロール(CL)
・カリウム(K)データの見方はこちら
(3)骨代謝異常に関する検査
・カルシウム(Ca)
・リン(P)
・インタクトPTH(i-PTH)データの見方はこちら
(4)貧血、栄養状態に関する検査
・赤血球(RBC)
・血色素ヘモグロビン(Hb)
・ヘマトクリット(Ht)
・白血球(W,WBC)
・血小板(PLT)
・総鉄結合能
・フェリチン
・アルブミン(Alb)データの見方はこちら
(5)肝臓に関する検査
・AST(GOT)
・ALT(GPT)
・γ-GTP
・アルカリホスファターゼ(ALP)
・HBs抗原
・HCV抗体データの見方はこちら
(6)そのほかの検査
・β2-ミクログロブリン(β2-MG)
・血糖値
・総コレステロール(T-Cho)
・心胸比(CTR)データの見方はこちら
(1)透析効率をみる検査

十分な透析治療ができているかを確認する検査です。

尿素窒素(BUN)
【解説】
たんぱく質がエネルギーとして体内で燃やされたあとに残るカスです。
高値の場合:
透析時間の不足、シャントの状態が悪く血液流量が少ない。たんぱく質の過剰摂取など。
低値の場合:
たんぱく質の摂取不足。
注意したいこと:
尿素窒素の数値が上がり、なおかつ筋肉が落ちたり、やせてきた場合は、食事が充分でないために筋肉を構成しているたんぱく質がエネルギー源として使われていることが考えられます。体の中のたんぱく質は本来新しい細胞(体の部品)をつくるために必要なので、食事からしっかり栄養を摂ることが重要です。
【参考値】
透析前:80mg/dL以下
透析後:30mg/dL以下
(個人差もあるため目標とする値は医師とご相談ください)
クレアチニン(CRE)
【解説】
筋肉の代謝産物です。筋肉の豊富な方ほど高く、体格や運動量による個人差があるので、自分の基準値を知っておくことが大切です。食事には関与しないため、透析効率をみるための良い指標になります。
【参考値】
透析後:透析前の半分程度個人差があります。
尿酸(UA)
【解説】
尿酸はプリン体が分解してできた老廃物です。透析効率をみるために補助的に使用されます。
高値の場合:
痛風の原因となります。 腎臓の病気、白血病、降圧剤などの影響。 プリン体を多く含む食品・牛乳や牛肉の過剰摂取。 慢性的に高いと、動脈硬化を起こす危険性があります。
【参考値】
一般成人正常値:6mg/dL以下
(2)電解質に関する検査

主に体液のイオンバランスを確認する検査です。

ナトリウム(Na)
【解説】
体液の浸透圧の維持、筋肉や神経の働きに関係しています。腎臓が悪くなるとナトリウムを排泄できなくなり、数値が上がります。
高値の場合:
塩分のとりすぎ、または脱水。脱水は水分が抜けてナトリウムだけが残っている状態です。
低値の場合:
食事を摂れない。水のとりすぎ。
【参考値】
一般成人正常値:
135~150mEq/L
クロール(CL)
【解説】
主にNaCl(食塩)として摂取され、体液のバランス維持の役割を果たしています。 血液が酸性に傾くと上昇します。
高値の場合:
嘔吐・下痢などで大量の水分を失った場合。食塩の摂りすぎなど。
低値の場合:
水分の過剰摂取や食塩の摂取不足など。
【参考値】
一般成人正常値:
98~108mEq/L
カリウム(K)
【解説】
ナトリウムの排泄を促す働きがあります。細胞の中にも元々含まれています。
高値の場合:
野菜や果物などカリウムの摂りすぎ。透析不足。細胞が壊れた場合や薬剤によっても上がることがあります。
低値の場合:
たんぱく質の摂取不足。
注意したいこと:
7.5~8mEq/L以上になるとと死に至る不整脈を起こすことがあり、大変危険です。食生活に注意しましょう。
【参考値】
透析前の目標値:
5.5mEq/L以下
透析後の目標値:
3~3.5mEq/L
(3)骨代謝異常に関する検査
カルシウム(Ca)
【解説】
骨のもとになる物質です。低い状態が続くと骨がもろくなり、高い状態が続くと骨以外のところにカルシウムの沈着が起こります。
注意したいこと:
カルシウムは検査データにより、薬剤で適正な値にコントロールする必要があります。自己判断でカルシウムの多い食べ物やサプリメントなどをとるのは避けてください。カルシウムを多く含む食品はリンも多いので逆効果になってしまいます。
【参考値】
8.4~10.0mg/dL
リン(P)
【解説】
骨や筋肉をつくる大事なミネラルです。ほとんどの食べ物すべてに含まれています。
高値の場合:
関節や血管が石灰化し、心筋梗塞や脳梗塞などが起こります。
低値の場合:
骨を弱くすると考えられています。
【参考値】
一般成人正常値:
3.5~6.0mg/dL
インタクトPTH
【解説】
カルシウムを調節するホルモンです。カルシウムを骨から調達する作用があるため、高値が続くと骨がスカスカになってしまいます。
【参考値】
60~240pg/mL

カルシウムとリンの値は、本来かけ合わせて一定になるように調節されていますが、透析患者様の場合、カルシウムが下がってリンが上がります。そして、カルシウムを調節するホルモン(PTH)が上がります。PTHはカルシウムを骨から調達する作用があるため、骨がスカスカになってしまいます。それを防ぐための薬としてビタミンDが使用されます。ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収を増やし、骨を守ります。