【透析中の患者さんへ 】腎臓専門医から|コロナウイルス対策アドバイス

透析治療中の患者さんへ 新型コロナウイルスの注意点

はじめに


横浜じんせい病院 院長
山口 聡 先生

2019年12月に中国湖北省武漢市から発生した新型コロナウイルス感染症は、またたく間に世界中に広がりました。特に、米国や欧州では甚大な被害が生じており、都市封鎖を行う国も増えています。外出や移動を禁止され、まさに戒厳令下の都市の様相を呈しています。日本においても、2020年1月15日に1例目が報告されてから感染患者の増加は続いています。

感染の終息が未だ見えない状況のなか、透析治療中の患者さんもかなり不安な毎日をお過ごしかと思います。ご存知の通り、透析患者さんは免疫力が低下しており、感染にかかりやすく、かつ重症化しやすいため、人一倍の注意が必要です。以下に皆さんが注意すべきいくつかのポイントを記しました。ご自分の命を守るのはもちろん、自分が媒介となり他の方にうつさないような注意も必要です。このようなときこそ、冷静で思いやりのある行動を心がけていただければありがたいです。

家庭で気を付けること

コロナウイルスは、感染患者のせきやくしゃみで撒き散らかされた細かい唾液(飛沫)の中に多量に含まれています。これらが空中に漂っている時に、吸い込んでしまうと感染を起こします(飛沫感染)。せきやくしゃみ等がなくても、閉鎖された空間において近距離で多くの人と会話する等の環境下であれば感染する危険が高いといわれています。

また、手すりやドアノブなど、手で触る場所にウイルスが含まれた体液が付いていた場合、それが目や口にはいることで感染を起こしてしまいます(接触感染)。これらを理解したうえで、どのようにすればウイルスが体内に入ってこないようにするか考え、実践することが大切です。具体的には、

① 不要な外出は避けましょう。
② 大勢の人が集まる場所は避けましょう。
③ どうしても外出しなければならない場合、人の少ない時間を選んで外出しましょう。
④ 外出時にはマスクを着用しましょう。
⑤ 外出後のうがいや手洗いを徹底しましょう。
⑥ 部屋の換気を頻回に行いましょう。
⑦ ドアノブなどの共用する部分は消毒用アルコールでこまめに拭きましょう。
⑧ 自分の体調管理をしっかり行いましょう。体温は必ず毎朝測定しましょう。
⑨ 日頃から目や口に指を触れないようにしましょう。

クリニックで気を付けること

基本的には家庭での注意点と同じです。大勢の人が集まるところは非常に危険な場所と考えて行動してください。

透析患者さんは定期的に透析を受けなければ、尿毒素が蓄積されることで尿毒症となります。むくみや呼吸困難を来し、吐き気のため食事もとれなくなり、生命が危険にさらされます。
ウイルスに感染しないよう、外出を控えたいと思いますが、透析を受けるための通院は必要です。透析室のベッド間隔は広めにとってありますが、感染を確実に防げる距離ではありません。病院内だからこそ次の感染予防をこころがけましょう。

① 透析前や透析後の、患者さん同士の交流は、最低限に抑え、他人との接触は、できるだけ短くしましょう。
② 接触する場合は、マスクを着用したうえで、十分な距離をあけましょう。
③ 透析中はマスクを着用しましょう。
④ 入室前と入室後は、手洗いを必ず行いましょう。