【2022年度最新版|透析中の方への熱中症対策】腎臓専門医からアドバイス

透析治療中の患者さんへ 熱中症予防のアドバイス

はじめに


医療法人社団 厚済会
上大岡仁正クリニック
山田 裕貴子 先生


熱中症とは、暑い場所にいる時・いた後に、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能がうまく働かなくなることにより、体内に熱がたまり、筋肉痛や頭痛、吐き気やだるさなどの様々な症状が現れる病態です。重症になると意識障害やけいれんが起こり、命に関わることもあります。

熱中症にならないためには?

熱中症は予防が最も大切で、一般的な熱中症の予防としては以下のような対策が有効です。

暑さを避ける
・屋外では:日陰を選んで歩いたり、日傘をさしたり帽子をかぶったりしましょう。暑い日に屋外に長時間いたり、炎天下で活動することは危険です。
・屋内では:室温28度を目安にエアコンや扇風機を使ったり、カーテンやブラインドで直射日光を防いだりして、暑さを避けましょう。猛暑では過度な節電は控えて、我慢せずエアコンを使いましょう。

体の蓄熱を防ぐ
通気性の良い、吸水性・速乾性に優れた素材の服や下着を着るなど、服装を工夫しましょう。

こまめに水分を補給する
暑い日には、知らず知らずのうちに汗をかいています。脱水にならないよう、のどの渇きを感じなくても、こまめに十分な水分を補給しましょう(透析患者さんの対応については後記)。

その他
体がまだ暑さに慣れていないときは急に暑くなった日に熱中症が起こりやすくなります。暑さには徐々に慣れるように工夫しましょう。

透析治療中の患者さんが熱中症予防で特に気を付けるべき点

汗をかいていない/少ない時
意識していつもより水分を多く摂る必要はありません。また、多量の発汗、下痢、嘔吐が無ければ、体から失われる塩分(ナトリウム)の量は多くないため、あえて塩分を意識して多く摂る必要もありません。水分摂取にはナトリウムやカリウムの含まれない(少ない)水や麦茶などが向いています。

汗をたくさんかいた時
汗によって体重が減少した分を補給するイメージで少しずつこまめに水分を摂りましょう。汗をたくさんかいた場合は、透析治療中の方も、一般の方も、体からナトリウムなどの電解質も失われるため、塩分(ナトリウム)の含まれるスポーツドリンク(オススメは表をご参照ください)等を少しずつ飲むのも良いでしょう。

ただし、商品によっては透析治療中の患者さんにとって塩分(ナトリウム)、カリウム等が多く含まれ過ぎているものもあるので注意が必要です。透析治療中の患者さんが選ぶなら、スポーツドリンクなどが比較的塩分(ナトリウム)、カリウムが少なめで、おすすめです。塩分の目安としては、0.1-0.2%のものが適当で、発汗量に応じて摂取してください。

体重を測ると、どれくらい水分を補給すればいいか、摂った水分の量が適切だったかを判断する目安になります。透析と透析の間の体重増加が多くなりすぎないように(ドライウェイト(基礎体重)の3~5%(中1日で〜3%、中2日で〜5%))、またいつもより極端に少なくならないように 水分摂取量を調節しましょう。

その他、アルコールは、体内で分解される際に水分を消費してしまうため、水分補給には適しません。また、コーヒーや紅茶など、カフェインを含む飲料は利尿作用があるため、自尿のある透析治療中の患者さんの水分補給には、適しません。