透析中の症状や主な合併症

透析中に起こりやすい症状

透析を行うと余分な水分や老廃物が除去され、電解質が急に補正されるため、体のバランスが崩れ、さまざまな症状があらわれることがあります。これを不均衡症候群と言います。具合が悪くなったら我慢をせず、看護師に声をかけてください。

不均衡症候群の症状
  • 全身脱力感
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 血圧低下
  • 手足のひきつれ

さまざまな合併症

透析を続けていると、さまざまな合併症が起こることがあります。透析を開始する時点ですでに合併症を持っている患者様は、さらに悪くならないように注意しましょう。

高血圧
腎臓の働きが悪くなると塩分や水分が体に溜まって血液量が増えるため、血圧が上がります。また、血圧上昇ホルモンや自律神経の乱れが原因で、高血圧になる場合もあります。
低血圧
透析中だけ血圧が下がる場合には、体重増加が原因となることが多く、塩分・水分制限をする必要があります。一方、透析を長く続けている場合の低血圧の原因としては、慢性心不全や自律神経障害などや、設定されたドライウエイトが適正でないことがあります。低血圧が続き透析が困難な場合には、血圧を上げる昇圧薬を飲むと楽になることがあります。
貧血
腎臓での造血ホルモンが不足することで貧血になりやすくなります。人工的につくられた造血ホルモンによる注射薬で、ほとんど解決できます。また、栄養不足が原因の場合もあります。
かゆみ
透析患者様の皮膚は乾燥しがちで、透析中や透析直後などにかゆみを感じることが多いです。冷暖房を使用する夏や冬、特に湿度が低くなる冬期に症状が出やすくなります。角質の水分保持能力の低下や、汗腺のはたらきが弱くなり汗が出ないことなどが原因と考えられています。せっけんでの洗いすぎやこすりすぎに注意し、保湿クリームなどを塗りましょう。
心不全
水分・塩分のとりすぎが原因で血液量が増え、心臓に負担がかかり、心臓のはたらきが弱くなってしまいます。悪化すると命にかかわる重大な合併症に至ります。食事に気を付け体重増加を少なくすることと、今まで以上に血圧を厳格に管理することが重要です。
感染症
透析患者様は細菌やウイルスに対する抵抗力が低下しているため、感染症にかかりやすくなります。また、症状が出にくい場合があるため、治療が遅れることもあります。予防と早期発見・早期治療がもっとも重要です。
脳血管障害
脳の血管が破れる脳出血と、脳の血管がつまる脳梗塞などがあります。高血圧や加齢、糖尿病や高脂血症などにより動脈硬化が進むことで起こりやすくなります。予防するためには食事療法に加え、血圧や体重の変動を少なくする必要があります。
骨・関節障害
血液中のリンが高くなると副甲状腺ホルモンが異常分泌をきたし、骨からカルシウムが溶け出して骨折しやすくなったり、骨や関節の痛みが出現したりします。予防するためにはリンの値を適正に保つことが大事です。

また、β2-ミクログロブリンというたんぱく質が関節・骨など全身に沈着する透析アミロイド症があります。手首に沈着すると、手の親指から中指にかけて痛みやしびれが出る手根管症候群を引き起こします。β2-ミクログロブリン値が上昇しないよう充分な透析を受けましょう。